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第一次世界大戦の戦史 (全史)第一次世界大戦の戦史、すなわち軍事的側面に限って記述しているもののうち、個別ないし特定時期の作戦にとどまらず、大戦の全体像を詳述しているもの、および戦史を理解するのに必要な兵器に関する情報を整理していているものとしては、以下があります。
リデル・ハート (上村達雄 訳) 『第一次世界大戦』
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![]() <訳書 フジ出版社版 函> ![]() <原著 ペーパーバック版 表紙> |
第一次世界大戦の戦史として定評のある、リデル・ハートの名著であり、第一次世界大戦を理解するための必読書の中でも、最重要の1冊である、と思います。 訳書のフジ出版社版は、本書と別冊『第一次世界大戦 地図・資料集』合わせて2冊で、一つの函に入っています。別冊には、原著に入っていた地図が抜き出されてまとめられているだけでなく、日本の参謀本部による『欧州戦争研究資料』中の資料や地図等も加えられています。 著者リデル・ハートは、「20世紀のイギリスを代表する戦略思想家」、1895年生まれの英国人で、ケンブリッジ大学出身、実際に自ら第一次大戦に志願・従軍し、「西部戦線における悲惨な塹壕戦を経験」、ソンム戦にも参加、負傷もしています。(リデル・ハートの評伝は、石津朋之 『リデル・ハートとリベラルな戦争観』にあります)。 本書を一言でいえば、第一次世界大戦の戦史、その軍事的経過に焦点を当て、同盟国側・連合国側双方の戦略・戦術について客観的に評価した書であると言えます。 本書はまず、大戦勃発の原因・両陣営の兵力・両陣営の作戦計画に各1章をあてて記述、次に具体的な戦争の経過について、1914年から1918年まで、各年単位で記述しています。 それぞれの年については、まずその年の全体の総括を行った後、その年の特に重要な作戦・戦闘について、個別に詳述しています。また、地図が付いているので、個々の戦闘の詳細についても、非常に理解がしやすいという特色があります。 本書の最大の特徴は、見方の客観性・公平さにあります。英国人であるからと言って、英国軍を贔屓した評価は一切行っておらず、批判すべきところはどんどん批判しています。逆にドイツが敵国だったからと言って、一方的にけなすこともなく、良い点は明記して称賛しています。 |
また、個々の作戦・戦闘について、ああしていたなら、こうしていれば、というコメントが多数なされていますが、結果論をあげつらっているのではなく、明らかに現実的なカイゼンのためのコメントであり、カイゼン視点から書かれた戦史、と言ってよいように思われます。
本書の良さを知るためには、最初に本書の「エピローグ―総括」を読むのが、手っ取り早いかもしれなません。7ページほどの記述の中に、上記の特徴がすべて出ている、と言えるように思います。
本書は、1930年の初刊時にはいわば研究論文集として出されたものが、1934年に多量の増補を行って改題の上出版された、との経緯であったとのこと(「訳者あとがき」)。1930年なら満州事変の1年前ですし、1934年でも支那事変の3年前、いずれにしても1937年の日中戦争開始や1941年の大東亜・太平洋戦争開戦までは、まだたっぷり時間があった時期でした。
その間に、当時の日本軍将官は、誰も本書を読まず、読んでいても、本書から容易に理解できる第一次世界大戦の教訓を学ぼうとせず、あるいは、本書に満ちあふれるカイゼン精神には何ら触発されなかったのでしょうか。
その後、戦争を開始して大失策を冒すことになった昭和前期の日本軍を考える上でも、本書には大きな価値がある、といえるように思われるます。
このウェブサイトでは、「第一次世界大戦が開戦に至った経緯」、「第一次世界大戦の経過」、「第一次世界大戦の総括」のほとんど全てのページで、本書からの要約引用を行っています。
なお、イギリス内では、リデル・ハートを批判する向きもあるようです。この点については、「第一次世界大戦の戦史 (ハート論)」のページをご参照ください。
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本書は、雑誌『歴史群像』および『歴史群像シリーズ』に掲載された、過去の第一次世界大戦関係の記事を再録したもので、記事の初出は、1997〜2011年の期間にわたっています。 記事の執筆者は、松代守弘、櫻井朋成、瀬戸利春、荒川佳夫、小林直樹、有坂純、田村尚也、山崎雅弘、森山康平の各氏。 本書の内容は、基本的に、読み物と言えるものではありますが、各記事の末尾に参考文献が明示されており、記述の典拠が明確です。 また、各記事には、地図や写真・図解が多用されており、大変に分かりやすくなっています。それぞれの作戦・戦闘の詳細や、具体的な兵器の使用法などの分かりやすさという点では、リデル・ハートの著書を確実に上回っていると言えます。 |
本書の内容は下記のとおりです。
上巻
下巻
日本が戦った第一次世界大戦である、青島攻略戦や駆逐艦隊の地中海遠征も含まれています。
本書は、第一次世界大戦の戦史を知る上で、やはりきわめて高い価値がある、と思います。
このウェブサイトでは、「第一次世界大戦が開戦に至った経緯」、「第一次世界大戦の経過」、「第一次世界大戦の総括」の多くのページで、本書からの要約引用を行っています。
もともとは児童生徒用の図書で、原著は日本流に言えば小学3年生〜中学1年生向け、訳書は小学校高学年〜中学生向け、とされています。しかし、内容は少しも馬鹿にしたものではありません。大人が読む価値が十分にあると思います。
開戦前のヨーロッパの同盟関係、サラエヴォ事件〜開戦、開戦直後の西部戦線、各国軍の装備、塹壕掘りと塹壕内の生活・戦闘、連絡と補給、監視と偵察、砲撃・突撃と死傷者、戦時の女性、飛行機と飛行船、海上の戦い、ガリポリ戦、ヴェルダン戦、毒ガス、東部戦線・イタリア戦線・中東戦線、スパイ活動、戦車戦、アメリカの参戦、塹壕爆破、最終年、停戦と講和、戦争の代価、といった事項について、すべて写真(一部イラスト)を使って説明されています。
現代の日本人が、およそ100年前のヨーロッパの事物を理解するためには、当時の写真を見ながらその説明受ける、という手法はきわめて効果的であり、思い込みの誤解が減らせる可能性が高くなると思います。その点で、本書も、第一次世界大戦の戦史をより適切に理解する上で、やはり高い価値がある一書、と思います。
本書については、本ウェブサイト中の「第一次世界大戦の経過 − 1915年@ 西部戦線での塹壕戦」のページで、触れています。
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著者のイアン・ウェストウェルは、第一次世界大戦・第二次世界大戦をはじめ、戦争に関する著作が多数ある戦史研究家であるようです。 第一次世界大戦中の作戦や戦闘に焦点を当てて記述されている一般の戦史とは異なり、本書は、大戦中に使用された兵器と、各兵器の大戦期間中の開発・発達の歴史が主題です。 第一次世界大戦は、その期間中に兵器が著しく発達し、多くの新兵器が開発されたという点で、大きな特色があります。 そのため、第一次世界大戦中の兵器発達史、といった内容の本を探したのですが、筆者の不勉強から、日本語の本では適当なものが見つけられず、インターネットでたまたま本書に行き当たりました。 |
第一次世界大戦での陸・空・海の主要兵器の全てが、網羅されています。個々の兵器の記述には、各見開き2ページ分が充てられていて、第一次世界大戦勃発時の使用状況、交戦各国の開発・使用方針の共通点と相違点、大戦期間中の開発・発達・生産状況、その兵器にまつわるエピソードなどが、多数の写真を付して簡潔にまとめられています。
兵器史の研究では、兵器の発展を一国についてだけ記述したものが少なくありませんが、それでは他国の兵器との比較がよく分かりません。本書は、同じ兵器についての各国の考え方や状況を対比しており、大変に参考になります。
本ウェブサイト中では、「第一次世界大戦の総括 B 兵器と軍事技術のカイゼン」のページで、第一次世界大戦中の開発・カイゼンの状況という観点から本書の内容を整理して、ご紹介しました。
読んでいただく価値が十分にある一書であると思います。
次は、第一次世界大戦の戦史のうち、特定の作戦や、特定の軍事分野などについて論じているものについてです。