西部戦線の英軍重砲
ベルギーの村の被害
廃墟を活用した通信壕
上 西部戦線の英軍重砲
中 ベルギーの村の被害
下 廃墟を活用した通信壕
(『欧州大戦写真帖』より)
 

カイゼン視点から見る

第一次世界大戦


A Review on World War I from Kaizen Aspect

第一次世界大戦の参考図書・資料

第一次世界大戦期の
日本の政治・経済

航行中の英艦隊
英軍の戦車
米軍の毒ガス対策
上 航行中の英艦隊
中 英軍の戦車
下 米軍の毒ガス対策
(『欧州大戦写真帳』より)
 
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カイゼン視点から見る日清戦争


第一次世界大戦期に至る日本の政治・経済の状況

まずは、第一次世界大戦期に至る日本の政治・経済の状況を知るための、資料あるいは本です。

政治状況の理解のためには、先に経済状況を理解しておく方が分かりやすくなる、ということで、経済関係のものから先に挙げます。

なお、加藤高明と対華21ヵ条要求に関するものや、戦史あるいは陸海軍に関するものは、別のページにまとめています。


安藤良雄 編 『近代日本経済史要覧』 東京大学出版会
第2版 1979 (初版 1975)

安藤良雄編 近代日本経済史要覧 表紙

堅苦しい書名で、中身のイメージが湧きにくいのですが、要するに、明治以降(一部幕末期を含む)の日本の経済統計資料集です。

国民総生産、鉱工業・農業生産指数、物価指数、貿易額、国際収支、人口などといった基本統計数字はもとより、様々な経済統計が網羅されています。

さらに、例えば「五ヵ条の誓文」や「廃藩置県の詔書」などといった時々の重要資料の本文や、年表、内閣一覧、財閥企業系統図、政党系統図などの情報も一冊にまとめられています。

出版されたのが1970年代末ですので、その年代までの統計しか載せられていない、という制約はありますが、明治〜昭和戦後期までの資料集としては、不都合はありません。

政治状況の基礎には経済状況があり、経済状況を理解しないと政治状況の理解も十分にはならない、という点からは、本書は日本の近代史を知るために必須の、基本参照資料である、と言えるように思います。

なお、この手の資料集としては当然のことですが、統計数字は「数表」で表されています。より理解しやすくするための「グラフ」化は、自ら試行する必要があります。

本書からは、本ウェブサイト中の、「日本が戦った第一次世界大戦 @ 第一次世界大戦時の日本の経済」「同 I シベリア出兵 (3)」「日本が学ばなかった大戦の教訓 @ 軍備より工業化」などのページで、データを活用しています。


石井寛治・海野福寿・中村政則編 『近代日本経済史を学ぶ』
(上) 明治 ・(下) 大正・昭和、1977 有斐閣選書

やはり1970年代後半の本で、大学生向けの日本経済史の教科書的な本です。

上掲の『近代日本経済史要覧』は資料集ですが、こちらは資料に基づいた分析を記述していること、その際、上掲書には含まれていない統計資料も出てくることが、本書のメリットです。

ただし、1970年代という時代の制約で、統計資料を分析する際の手法がマルクス経済学の手法となっています。今となっては一般的ではない手法や用語が使われていますが、内容自体は学究的ですので、今も役に立ちます。

ちょっとだけ探して他に適当なものに行き当たらなかったため、たまたま見つけた本書を使いましたが、もっと良い本があるのではないかという気がしています。

本書からは、本ウェブサイト中の、「日本が戦った第一次世界大戦 @ 第一次世界大戦時の日本の経済」のページで、データを活用しています。


大江志乃夫 『日本の産業革命』 岩波書店 1968

大江志乃夫 日本の産業革命 表紙

本書は、明治維新から日露戦争の戦後まで、すなわち、明治期の日本の経済史を記述しています。著者の言葉を使えば、「日本資本主義の成立とその論理」(本書「まえがき」)が主題です。

1970年以前の出版で上掲2書よりさらに古く、本書の記述には「教条的」と感じられる用語もしばしば使われてはいますが、内容はきわめて学究的であり、また定量的なデータに基づいていて具体的です。

本ウェブサイトでは、官営八幡製鉄所の生産確立〜拡張の状況を確認するために、本書を参照しています。

本書からは、本ウェブサイト中の、「日本が戦った第一次世界大戦 @ 第一次世界大戦時の日本の経済」のページで、データを活用しています。


石井寛治 『帝国主義日本の対外戦略』 名古屋大学出版会 2012

本書の目的は、帝国主義時代、すなわち、明治期から昭和前期までの、日本の対外膨張の歴史について、従来の研究書にはなかった視点から再検討すること、とされています。

著者は、従来研究の方法の問題点を3点挙げています。第一は、さまざまな選択肢の中から経済主体や政治主体がどのような意識と戦略によって特定の行動を選択し、それによって如何なる結果が生まれたのかという分析には立ち入っていなかったこと。第二は、資源確保による重化学工業化の水準と、それによる兵器の近代化の関連について、考察が不十分だったこと。第三に、満州事変に始まる戦争に対して、資本家が、経済的には非合理的な路線に追従していき、自らの経済的・合理的な利害を主張しきれなかったことの分析が不足していること。(本書「序章」)

著者が行っているこの3つの問題点の再検討は、このウェブサイトで行っているカイゼン視点から歴史を見ることと、アプローチとして類似性があるように思われ、筆者としても本書は非常に参考になりました。

本書は、日本の企業家の系譜とエートスの分析から出発します。日清戦争前に成功した企業家50名の半数近くが士族出身で、出身階級は企業家を形成する場合の決定的要因ではなかったこと、開国時に外国商人の国内通商を禁止したことが有力日本商人の活動が求められる原因になったこと、商人活動を支えたエートスは石田梅岩を創始者とする石門心学で、士農工商は身分の上下ではなく職分の相違に過ぎず、町人が武士と対等の存在理由を主張できるのは、正直・勤勉・倹約の態度にあることを説いたが、この石門心学が近代商人の大倉喜八郎や渋沢栄一のエートスとしても生きていること、などを指摘しています。

この企業家系譜・エートス論だけでも面白いのですが、本書で目を引くものとしては、例えば、日清戦争の賠償金は軍備拡張に優先的に投入されたため、殖産興業の費用は一般会計で賄うほかなくなり、軍拡は日本経済を圧迫したのであって、賠償金を有効に活用した殖産興業で資本主義が成立したという従来学説は誤りである、という指摘があります。

あるいは、第一次世界大戦後、三大財閥は対外投資に積極的ではなく、大連や満鉄沿線都市には日本人の中小商工業者や「一旗組」などが進出、実力ある日本人商工業者が満州に来ないのはうま味のある分野を満鉄が独占しているためという構造的な理由があり、関東軍が満州事変を決行した背景にはこうした満州居留民の危機意識があったが、一方関西のブルジョアジーの間では、当初は満州での関東軍の戦闘拡大への批判が相当根強く存在していた、という指摘も行われています。

第一次世界大戦期は本書が対象としている期間の一部に過ぎませんが、本書はその全体が非常に面白く、読む価値が極めて高い1冊であるように思います。

本書からは、本ウェブサイト中の、「日本が学ばなかった大戦の教訓 @ 軍備より工業化」「同 A 兵員数より最新兵器」のページで、要約引用を行っています。


今井清一 『大正デモクラシー』 (日本の歴史 23)
中央公論社 1966、 中公文庫版 1974

今井清一 大正デモクラシー 表紙

中央公論社版『日本の歴史』シリーズの1冊で、大正時代(1912〜1926)の通史です。

本書は、間違いなくこの時代についての基本的な知識を与えてくれますが、同様の本は多数あります。筆者は、たままた本書を使った、ということに過ぎません。

本書からは、本ウェブサイト中の、「日本が戦った第一次世界大戦 @ 第一次世界大戦時の日本の経済」および「同 A 第一次世界大戦時の日本の政治」のページで、要約引用を行っています。


伊藤之雄 『山県有朋 − 愚直な権力者の生涯』 文春新書 2009

伊藤之雄 山県有朋 表紙

「明治維新から現代までの政治家の伝記を執筆するのをライフワークとする」(文春新書 奥付)著者による、山県有朋の評伝です。山県有朋は、1838(天保9)年生まれ、1922(大正11)年に満83歳で亡くなっています。

本書は500ページに近い厚さで、新書としては大著です。それだけのボリュームがあるだけに、山県有朋に関する事実は詳細に押さえられている、という印象があります。

過去に出版された評伝と比べ、山県自身の書いた手紙や書類、山県宛の手紙、山県に近い人物たちの間で交換された手紙などの史料を追跡することで、「山県の政治的生涯や青少年期から老年期に至る喜怒哀楽を、家庭生活と結び付けながらわかりやすく描い」たもの(本書「はじめに」)です。

このアプローチのためか、本書では、山県と山県をを取り巻く人々との、その時々の人間関係が、非常に詳しく記述されています。

本書は、読みやすい文体でもあり、山県有朋の関与があった事件・政変や政策決定などについての事実や、山県を取り巻く人間関係を知るためには、必読の書であると言えるように思います。

しかしその一方で、山県がとった行動の背景にあった情勢判断については、深い追及はされておらず、とりわけその判断・行動が状況に対してどこまで適切であったか、判断・行動の結果がもたらした中長期的な影響、などについては、あまり詳しいとは言えないように思います。

とくに、時々の軍や政治に関する判断でも、国家の指導者であれば当然気にすべき経済や財政の状況について、山県がどのような認識を行っていたかは、ほとんど追及されていないため、山県の持っていた国家の将来像、あるいは、その国家の中での政府と陸軍との関係について、具体的なイメージは十分には得られません。この点は、本書で物足りなく感じたところでした。とはいえ、山県に関する事実の記述において、本書に大きな価値があることは間違いありません。

本書を読んで、山県有朋は、近代軍の建設に功績があったことは間違いないが、近代軍確立後の方針決定や運営はとても適切とは言えなかった、と言う感を深くしました。すなわち、山県有朋は、国家としての全体最適よりも、陸軍としての部分最適を優先し続けた結果、明治末期から大正期の日本を不適切な方向に向かわせた、という印象がより一層強まったのです。著者の意図とは異なる印象となったのかもしれませんが。

原敬や加藤友三郎は、あと20年とは言わず、せめて10年でも長生きしていたなら、日本は昭和前期の大失策を避けられたのではないか、と思いますが、山県有朋の場合には、もう15年、できれば30年ほど早く死んでいてくれたなら、日本はより良い近代国家になっていたのではないか、長生きしすぎた人物である、と感じざるをえません。

本書からは、本ウェブサイト中の、「日本が戦った第一次世界大戦 A 第一次世界大戦時の日本の政治」、および「同 G シベリア出兵 (1)」のページで、要約引用を行っています。


世外井上公伝編纂会編 『世外井上公伝』 全5巻
内外書籍 1933-34.
(『明治百年叢書』 原書房復刻 1968)

元老井上馨の伝記です。この第5巻に、井上馨が第一次世界大戦の勃発に際して、「大正新時代の天祐」と言ったという話が出てきます。国立国会図書館「デジタルコレクション」でインターネット公開されています。

本ウェブサイト中の「日本が戦った第一次世界大戦 B 日本の参戦決定の経緯」のページで書きました通り、この時期について記述している多くの歴史書で、あたかも井上馨が「切り取り強盗」を勧めたと誤解されかねない書き方で、この「大正新時代の天祐」という言葉が引用されていることは、誠に残念なことです。

井上馨は、明治の元老の中で最も経済・財政に明るかっただけでなく、官界を離れていた時期には現在の三井物産の前身となった会社を設立した人物です。それぐらいの人物ですから、多くの対外硬論者とは正反対で、「貧国強兵」論者ではなく「富国主義」者であり、一国利得主義者ではなく国際協調論者でした。列強から顰蹙を買うことが確実な「切り取り強盗」行為は、井上馨の思想に明らかに反することでした。

原典にあたっていただいて、井上馨がまさしく国際協調体制の立て直しを通じた日本経済発展の好機である、と主張していることを確認いただけると良いと思います。

なお、井上馨に関する評伝や評価については、「カイゼン視点から見る日清戦争 − 日清戦争の参考図書・資料 − 内政改革者井上馨」にまとめておりますので、こちらをご参照ください。


小田部雄次 『華族 −近代日本貴族の虚像と実像』
中公新書 2006』

小田部雄次 華族 表紙写真

本書には、華族制度が明治初年に設立され、昭和の敗戦後に廃止されるまでの歴史と、それにまつわるさまざまなエピソードが幅広く記述されています。

明治期から昭和前期の敗戦までの日本の近代史上で、重要人名の検索を行う際には、必携の1書、という気がします。

本書の巻末には、「華族一覧」というリストが付されており、何年何月、誰が、いかなる経歴・功績のゆえに爵位を授与されたのかが分かるためです。

本ウェブサイトでは、このリストを、「日本が学ばなかった大戦の教訓 @ 戦争するより非戦争で工業化」のページでの記述に活用しています。


次は、第一次世界大戦への日本の参戦決定のイニシャティブを取っただけでなく、青島攻略戦後には悪名高き対華21ヵ条要求を行った加藤高明と、その対華21ヵ条要求に関する研究書や論文についてです。


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