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第一次世界大戦の総合的記述 (日本の著者によるもの)第一次世界大戦について、軍事のみならず政治や社会まで含めた全体像を総合的に記述しているもののうち、日本の著者によるものを挙げます。 日本で出版されている第一次世界大戦関係の概説書・研究書は少なくないのに、ここで挙げているものが少ない理由は、@ 概説書や通史については、一般に欧米の著書の方が内容が優れている、A
研究書は、とくに最近のものについては、ミクロなテーマに入り込んでいるものが多く一般的な関心の対象とはなりにくい、という二つの理由によっています。 岩波講座 『世界歴史』 第23巻・第24巻・第25巻
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本書の性格は、岩波書店が出版した、「通史的論文集」と評するのが妥当、という気がします。 全体としては、各時代・各重要主題を相当に網羅しているので、かなりに「通史的」です。その一方、個々の主題への記述には、その執筆者による「論文的」性格が出ています。 その論文的性格のゆえに、記述が詳しい部分とそうでない部分の、通史的な観点から見た時のバランスが、あまり考慮されてはいないように思われるところが、一人の著者による通史とは異なる点です。 その代わり、例えばオーストリア、アラブ地域、アフリカなど、通例の通史ではあまり登場しない地域が詳しく論じられている、などの、論文集ならではのメリットがあります。 |
『第23巻 近代10 帝国主義時代II』には、下記の論文が含まれています。
『第24巻 現代1 第一次世界大戦』は下記の構成です。
『第25巻 現代2 第一次世界大戦直後』には、下記の論文が含まれています。
本書からは、このウェブサイト中、下記のページで、要約引用を行っています。
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本書は、第一次世界大戦期についての「概説的読み物」、と評するのが適切のように思います。 内容上では、「軍事、内政などよりも国際関係が、外交関係が主題」(著書「はしがき」)というのが最大の特徴です。実際、軍事面についてはごく簡単な記述しかありません。 社会主義者の動向にも大きな関心が払われているのは、執筆された時代の反映かもしれません。 「読み物」的であるため、非常に読みやすいというメリットはあります。 本書は、JMウィンターやAJPテイラーの著書に進みやすくするための読み物、といった位置付けかと思います。 |
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本書の目的は、「第一次世界大戦史研究が現在どのような段階に達しているかを示し、それによって大戦像がどのように変わってきたかを確認すること」であるが、「第一次大戦の入門書として活用できるように配慮した」(本書「はじめに」)とされています。 また記述については、これまでは軍事史と歴史研究は切り離され、歴史研究では「もっぱら銃後の世界が扱われることが多かった」中で、「いわゆる軍事史、戦史の領域」にも「比較的多くの注意を向けている」(同)という特色があります。 日本人の著者による第一次世界大戦の入門書としては、価値が高い、と感じています。 また、巻末の「文献案内」は、最新のものまでリストアップされており、主要な文献には著者の短評が付されている点、とくに入門者には役に立つと思います。 |
ただし、率直に言って、上述の目的を、新書版220ページ程の中に詰め込もうとするのには、ちょっと無理があったのではないか、という感想を持ちました。
例えば、大戦史研究の展開では、具体的に紹介されているのはフィッシャー説だけで、他の説が紹介されているわけではありません。また、第一次世界大戦の推移の記述は、レベルが高い分、舌足らずになっているところもある、という印象を持ちました。
また、本書中の戦死数の表には、間違った数字が混じっているように思われる、という点もちょっと残念なところでした。例えばドイツは、軍人1320万人、戦死数293.7万人、戦死者比率15%とされていますが、軍人数と戦死数が正しいなら戦死者比率は22%、他方、軍人数と戦死者比率が正しいなら戦死数は200万人程度、のはずですので。
本書から初めて、次にAJPテイラー、JMウィンター、リデル・ハートなどの著作に進む、というのが、良いかもしれません。
なお、本書からは、このウェブサイト中、「第一次世界大戦の経過 − 1914年 C 海上の戦いと1914年の総括」のページで、要約引用を行っています。
次は、第一次世界大戦がなぜ開戦するに至ったか、開戦の経緯を理解する上で参考になった図書・資料についてです。